名曲千夜一夜物語-732~"Splintered"-Aisha Badru-2018
- Norihiko Yamanuki a.k.a. Bosatsu Beat

- 9月30日
- 読了時間: 10分
Aisha BadruはNewYorkで活動するインディーフォークアーティストで
デビューアルバム『Pendulum』をリリースして
1億3500万回以上のストリーミング再生回数を実現しています。
米国欧州の実態を知ると、インディーズ系プラットフォームによる
アーティスト活動が自然なことであると強く感じます。
それは自分を偽らずに生きれるから、に他なりません。
Aisha Badruのストーリーを知ると、特にそれは強く感じられます。
歌詞と日本語訳の後に、
彼女のインタビュー記事を訳したものを載せます。
長くなりますが、
今の時代に自分をしっかり持っているアーティストならば、
どう行動するのが良いのかが感じていただければと
思いますので、全文を載せます。
"Splintered" written by Aisha Badru
They never taught us how to love
So use our pain, to comfort us
And we never practice what we preach
Instead we find, someone else to teach
We try not to see with our eyes
We fill our plates, with dozens of lies
And we try so hard to keep it in
We turn away, from what lies within
We are splintered and we are rotten
Deep within the walls that we've forgotten
All the answers to all our problems
Lie within the one who tries to dodge them
Ooh, ooh-ooh
Ooh-ooh, ooh-ooh
Ooh, ooh-ooh
Ooh-ooh, ooh-ooh
We're so afraid to be alone
So we hoard our pain, and call it home
They never taught us how to look inside
Only how to run and how to dry our eyes
We dig ourselves into a ditch
How many of us die, and pretend to live
We stop the light from leaking in
When we turn away, from the lights within
We are splintered and we are rotten
Deep within the walls that we've forgotten
All the answers to all our problems
Lie within the one who tries to dodge them
We are splintered and we are rotten
Deep under the floorboards, we've forgotten
But all the answers, to all our problems
Lie within the one who tries to dodge them
Ooh, ooh-ooh
Ooh-ooh, ooh-ooh
Ooh, ooh-ooh
Ooh-ooh, ooh-ooh
愛し方を教えてくれなかった
だから痛みを慰めに使う
そして私たちは学びを決して実践しない
代わりに誰かに教えてもらう
私たちは目で見ないようにしている
たくさんの嘘を皿に盛る
そして私たちはそれをかくすことに必死です
私たちは内に秘めたものから目を背けます
私たちはバラバラになり、腐り果てています
忘れてしまった壁の奥深くで
でも、すべての問題に対する答えは
問題を無視する人の中にある
Ooh, ooh-ooh
Ooh-ooh, ooh-ooh
Ooh, ooh-ooh
Ooh-ooh, ooh-ooh
孤独になるのが怖すぎる
だから痛みを溜め込み、それをホームと呼ぶ
心の内を見つめる術を誰も教えてくれなかった
ただ逃げることと、涙を拭うことしか教えてくれなかった
私たちは溝を掘り進む
どれだけの人が死んでも生きているふりをするのだろう
漏れている光を見失う
内なる光から目を背けると
私たちはバラバラになり、腐り果てている
忘れてしまった壁の奥深くで
あらゆる問題の答えは
それを避けようとする者の中にある
私たちはバラバラになり、腐り果てている
床板の下深くで、私たちは忘れてしまった
でも、すべての問題に対する答えは
問題を無視する人の中にある
Ooh, ooh-ooh
Ooh-ooh, ooh-ooh
Ooh, ooh-ooh
Ooh-ooh, ooh-ooh
<Aisha Badru インタビュー>
東洋哲学において「対極の調和」は繰り返し取り上げられるテーマであり、
人生において良いことと悪いことは必ず訪れるというものです。
シンガーソングライターのアイシャ・バドルは、まさにこの二面性を体現してきました。
だからこそ彼女は、
かつて自分を苦しめたことが、今どのように自分に力を与え、
プラスにしてくれているのかを
明らかにするために、
アルバム『ペンデュラム』(Nettwerk)に全力を捧げたのです。
「あらゆる人間が経験する大きなテーマは、善と悪の間で常に揺れ動いていることです」
と彼女は言います。
「それを避けることはできません。その揺れが永遠ではないと気づくことで、
人生で起こるかもしれない不幸な出来事に対する感情をコントロールする能力が
育まれていくのです。」
優雅で広がりのある、美しいハーモニー(しばしばナイチンゲールの歌声を思わせる)
でありながら、
『ペンデュラム』は強い意志が響き渡るアルバム作品です。
謙虚な物思いが、今にも超越的な闘いの叫びへ昇華するかもしれません。
『ペンデュラム』は普遍的なメッセージを届けます。
しかし、それはバドルがどんな困難や失恋にも決して屈しないという
姿勢を物語る音楽でもあります。
アルバムからのファーストシングル「Bridges」は後者=失恋について歌っています。
雰囲気のある曲で、ボコーダーが幽玄な響きを醸し出しています。
バドルは歌う。
「登るべき山はあるだろう/太陽が昇らない日もあるだろう/
でも私は諦めない」。
ビデオでは、男性の悪魔を象徴するドッペルゲンガーによって
暴力的に引き裂かれるカップルが描かれています。
「あの山々は個人的な悪魔です。最も愛する人から
引き裂いてしまうこともあります」と彼女は説明する。
「相手があなたなしで自分自身の戦いをしなければならない時でも、
寄り添い続けるには忍耐が必要です。」
世界がバドルを初めて知ったのは、
全く異なるタイプのラブソングを通してだった。
2016年、フォルクスワーゲンは、彼女の初期作品の一つである、
美しく静謐で物悲しい「Waiting Around」を広告に使用することにした。
「あの広告を獲得した時、私の人生は完全に変わりました」と彼女は語る。
この広告はついにバドルに作品の製作費をもたらし、
世界中のリスナーを魅了した。
例えば、「Navy Blues」は、エディット・ピアフの魂を宿した、
美しくも砕け散ったバラードで、
Spotifyで 100万回以上再生された。
この曲は、関係を断ち切った軍人との激しいロマンスを歌っており、
共感できる内容となっている(「あなたは鎧を着ていた」と彼女は歌う。
「私は何も持っていなかった」)。
「あの夏以来、彼に会っていません。
恋愛関係において、相手よりも、その相手を思いやる人がいることは
よくあることです」と彼女は説明する。
「でも、私は自分の悲しみをアートに変えたのです。」
バドルの作品が持つ感情を揺さぶる力に抗うことは不可能だ
(彼女のライブでは観客が涙を流すことで知られている)
そして、彼女の才能の源でもある自立したインディーズ精神は見事だ。
例えば「Pendulum」はイギリス在住のクリス・ハッチソンがプロデュースしたが、
彼女は一度も彼に会ったことはない。業界との繋がりもなく、
VWからの資金も少額だったバドルは、ただひたすら「音楽プロデューサー」
でグーグルを検索し、検索結果を3日間かけて聴き込み、
ついに理想のプロデューサーを見つけた。
「直感に従うんです」と彼女は言う。
彼らはSkype通話やファイル共有で作業を進めた。
「彼は私のことを理解してくれているような気がしました」
ハッチンソンのプロデュースは、実に繊細で、感情を豊かに喚起すると同時に、
バドルの歌詞が各曲の聴覚の中心となるように軽やかに表現されている。
もし「Pendulum」の中で、彼女が「直感に耳を傾ける」アンセム曲があるとすれば、
それは「Mind on Fire」だろう。
「この曲は認知的不協和について歌っています。
ある感情を抱いているのに、その反対の行動をしてしまうこと。
私たちが表に出さない、あの情熱、あの炎のようなものなんです」
とバドルは語る。
ビデオには、活動家、働きすぎの母親、アイススケーター、そして
バドル自身など、様々な女性が登場し、それぞれがそれぞれの状況に
縛られているように見える。
この曲はバドルに、自分のコンフォートゾーンから抜け出し、
より高い音域へと踏み出すきっかけを与えた。
「人生であんな風に歌ったことはなかった! アパートでギターパートを
ループ録音して、そこにランダムにボーカルのハーモニーを加えたの。
あんなに高い声で歌うのは、まるで幽体離脱したような体験でした」
彼女はいつもこんなに大胆だったわけではありません。
ニューヨーク州ヨンカーズで育ったバドルは、
内気でためらいがちなティーンエイジャーでした。
「私が育ったヨンカーズには、良い面もあれば、そうでない面もありました」
と彼女は言います。
「低所得者層の地域で育つと、将来がどうなるかなど、多くの"きめつけ"が
押し付けられます。」彼女は孤立感を感じ始めました。
「私は自分が固定観念に当てはまらないと分かっていたからです。
世界に対して心を開いていようと努力しましたが、
自分も周りの人も枠にはまっているように感じると、それは難しいことです。」
両親は彼女が幼い頃に離婚しました。ホームヘルパーだった母は
バドルと兄弟姉妹を育てました。
教授だった父はルイビル大学で教鞭をとっていました。
「私は両方の世界を経験しました。」
「お金の不足がゆえに、環境の限界に身を崩してしまう人を理解できるので、
強い共感力を身につけました」と彼女は回想します。
「でも、父のおかげで、自分のホーム以外の場にもたくさんのことが
あるのだと知ることができました。」
彼女は内気だったかもしれないが、自立心も持っていた。
「母は仕事に追われていたので、思うようにそばにいてくれなかったんです」
とバドルは言う。「私は自立しなければならなかったんです。」
10年生の時、彼女は文学と作文に出会い、1年後には彼女はギタークラブに通い、
そこでギターを学びながらリードボーカルも担当していた。
当時、彼女はトップ40の音楽に親しんでいた。彼女を励ましてくれた
音楽教師は、彼女に新しい音楽の世界を開いてくれた。
「先生はビートルズの『ブラックバード』とトレイシー・チャップマンを
教えてくれたんです。」
今日に至るまで、彼女はすべての曲をギターで作曲しており、
その後はハッチソンが音のテクスチャーを加えている。
卒業後、バドルは2つの音楽奨学金を辞退し
(「まだアーティストになれる自信がなかった」)
代わりにブロンクスの大学に進学した。
しかし大学には苦悩が多く、彼女は3年後についに中退した。
彼女の曲「Splintered」はその旅に触れている。
「私たちはバラバラになって、腐っている」と彼女は
ジョニ・ミッチェルのナイチンゲールのような静かな声で歌う。
「忘れてしまった壁の奥深くで。」
この曲は、人々に自分の人生をコントロールするよう呼びかけるものだ。
「私たちは問題を他人に向け、いつも誰かのせいにしている」と彼女は言う。
「世界が壊れているのではなく、壊れているのは私たちです。
世界はただ私たちの反映に過ぎません。
私たちは責任を取り、力を取り戻し、自分自身を取り戻すことを投げ出しているのです。」
大学を中退したことで
「父との間に多くの軋轢が生じました」と彼女は言います。
「でも、もし誰かが私の人生を変えてくれるとしたら、
それは自分自身だと分かっていました。」
彼女は書店で働き、オープンマイクナイトで歌って音楽を録音するお金を貯め、
録音した曲ををオンラインで公開しました。
「Waiting Around」は自然と注目を集め、最終的にフォルクスワーゲンの
CM出演につながったのです。
結局、そのCMは遠くアフリカまで放映されました。
そしてその時父親はアフリカに移住したばかりでした。
「父はナイジェリアから電話をかけてきて、
『テレビで君のCMを見たよ。本当に誇りに思うよ』と言ってくれました」
と彼女は言います。
「その時初めて、私が頭のおかしい、怠け者のサブカル人間ではないと、
父は真に私を理解したのです。」
バドルが初めて自分が真のアーティストだと気づいたのも、この時でした。
「自分が負けていないと気づくためには、
完全に敗北感を味わう必要があることもあるんです」
と彼女は言います。
from FIRST AVENUE&7thSt


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